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「奴めも野心を抱いておるのか?ともかく、ルノーから目を離すな。その方が直接指揮を取れ。サイレント・キッチンの表の部隊を動員してでもルノーの奴に騒ぎを起こさせるな。」「承知いたしましたですな。」「ふーっ、すっきりしたぜ。やっぱり風呂ってやつは最高だな。」「ハンベエ、長湯なんだもん。オイラ、逆上せちゃったよお。」ラシャレー浴場と書かれた大きな看板のある石造りの門から、ハンベエとロキが出て来た処であった。 門の内側には何人かの兵士が警備の任に付いている。浴場内でトラブルが発生しないように、ゴロデリア王国宰相ラシャレーが直接配備した警備兵達である。公司註冊ラシャレー浴場は、入浴料により、『上』、『並』、『恵』、『特上』の四つのクラスに別れていた。恵は最下層の暮らしをする者でも入れるようにと、銅貨5枚の値段に設定されていた。もっとも、混浴の上に入浴時間に20分という制限があった。並は男女別々に仕分けられていて、時間制限無し。値段は銅貨20枚。上は個室で、銀貨3枚。貴族や金持ち用であった。そして、特上は上より広めの浴場で、貸し切り仕様である。つまり、一人であろうとグループであろうと、好きな人数で貸し切りにできるのだ。ただし、湯船の広さで20人が限度のようだ。値段は一人につき、金貨1枚という桁違いに高い値段である。その上、一人につき金貨1枚とは不思議な値段であった。つまり、一人で貸し切れば金貨1枚、4人で貸し切れば金貨4枚と、貸し切る人数が多ければ多いほど、提供される設備は一つなのに値段が高くなる仕組みなのだ。『おかしいじゃないか、責任者出て来い!』と文句の一つも言いだす奴がいそうな気がするが、宰相ラシャレー威光の賜物か、この価格基準が罷り通っていた。大陸全体では湯に浸かる文化はほとんど無く、その習慣を持つ人口は微々たるものであったが、ラシャレー浴場は割と盛況であった。貧困層は20分の混浴と言っても、安い値段で垢を落とせるこの施設に安らぎを見いだしていたし、金持ちや貴族は高い値段で貧乏人に己の裕福さを見せ付けようと、上のクラスを選んだ。そして、普通の暮らしの者やゲッソリナに旅行で来た者は並のクラスを選んで入ったのである。旅人の中には旅土産にしようと、気張って上のクラスにする者もいた。今回、ハンベエとロキは特上に入った。金貨二枚であった。特上に入るのは物好きの連中である。たかが風呂に、金貨1枚というのは法外な値段であり、しかも、貸し切り以外に特別なサービスが有るわけではない。だが、世の中変り者や見栄っ張りはいるもので、一部の金持ち連中の間では仲間の代金を支払ってラシャレー浴場の特上コースに招待するのがちょっとしたブームになったりもしていた。「しかし、ハンベエの物好きもひどいよねえ。たかが、風呂に入るのに金貨二枚も払うなんて、銅貨20枚の中のクラスで十分じゃないかあ。あんまり贅沢してるとお、お金無くなるよお。お金ないと惨めなんだよお。」ロキがちょぴり不満げに言った。金銭感覚の鋭いロキはハンベエの無駄遣いが気に入らない様子だ。うん、すまん。金の使い方にはもう少し気を付ける。」ハンベエはロキに屈託無く言った。