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告白めいたエレナの言葉をハンベエはやはり黙然と聞いた。ある事件と言った時、ロキが何の事件なのか聞きたそうな表情をしたが、ハンベエが目でそれを制した。「そんな時、私の気鬱を散じてくれたのが剣の道でした。バンケルク将軍は私に手取り足取り剣のいろはを教えてくれました。その日々を通じて漸く私の気鬱の病も収まったのです。言わば将軍は私の命の恩人でもあります。」ここまで喋って、エレナは一旦言葉を切り、ロキに目をやった。「ロキさん、初めてあなたに出会った時、あなたは将軍の手紙を私に届けてくれましたね。あの手紙には私に殺し屋が差し向けられた事が書かれていたのですが、私にとってはもっと重要な事が書かれていたのです。」エレナがこう言うと、ロキはどんぐりマナコをさらに丸くしてエレナを見つめた。ハンベエはと言えば、腕組みのまま、相変わらず無愛想な顔をしている。「将軍に求婚されたのです。元より、私は将軍をお慕いしYaz避孕藥 優思明ていましたから、少なからず嬉しく思いました。ただ、私は結婚などして良いものか、私のような者が将軍の妻になって良いものかと、踏ん切りがつきませんでした。それで、ロキさんに持たせた手紙には将軍に思案の時間をいただくよう書いたのです。」(私のような者?・・・。)エレナの言葉にハンベエはふと首を捻った。エレナは王女であり、バンケルクは一介の将軍に過ぎない。幾らエレナが謙虚な性格だとしても、王女が将軍に求婚されて、『私のような者』とはへり下り過ぎである。ハンベエは甚だ奇異に感じたが、この男の癖で無表情に聞いているだけである。エレナとはどういうわけか、出会った時から素直に話す事ができないハンベエであった。いや、山を降りてから、話をした女人はエレナとイザベラくらいであり、この若者、女性と気さくに話すという事が未だ器用にできないのかも知れない。ただ、何故バンケルクの使者にロキが選ばれたのか初めて分かったように思えた。流石にバンケルクもそのような手紙が部下に盗み見られる事を懸念したのであろう。「将軍との諍いは・・・第5連隊に対する扱いや、ハンベエさんに対する処遇についてでした。第5連隊については戦略上の問題という説明でしたが、ハンベエさんについては納得のいく説明はありませんでした。・・・私には、何故将軍があれほどハンベエさんを憎むのか分かりません。」エレナはバンケルクがハンベエを憎む理由が分からないと言ったが、実のところは『嫉妬』によるものだと薄らと感じていた。だが、彼女の身からはそんな事は口が裂けても言えるものではなかった。「将軍は、ハンベエさんはタゴロロームの兵士を二百人も殺戮したと言いました。本当の事でしょうか?」「確かに。」ハンベエはぶっきらぼうに答えた。「何故そんな事になったのですか?」「何故も何も、最初言ったとおり、俺とバンケルクは最早抜き差しならないとこまで来ている。奴が俺を殺させようと差し向けたから、返り討ちにしたまでの事。もっとも逃げようと思えば逃げれたが、俺は人を殺すのは嫌いじゃないのでね、逃げずに相手になってやったのさ。」人を殺すのは嫌いじゃない、この人は何故こんな物言いをするのだろう、とエレナは悲しくなったが、同時にハンベエの『向こうが襲って来たから相手になった』という言い分も素直に信じる事ができた。ハンベエの言葉に嘘はない、そうエレナは感じた。「やはり、そうでしたか。・・・ハンベエさんの身になれば、今更将軍と争わないで欲しいと言うのは理不尽な言い分であるという事は重々分かります。でも・・・それでも・・・あなたは、私の恩人を殺しますか?私の婚約者を殺そうというのですか?」エレナは例えようもない悲しげな目でハンベエを見つめた。ハンベエの胸中では、全く今更の話であった。アルハインドの戦いで生き延びた時から、この若者の心は決まっていた。バンケルク共を許す事は無い。必ず、倒してやると。コーデリアスとの約束でもあった。ただ、そのためだけに連隊を纏め、一手一手用心深く凌ぎながら、状況の好転を待っていたのである。最早、とハンベエは何度も思った。