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mukai

メッセージひとつ作るにしても

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メッセージひとつ作るにしても

メッセージひとつ作るにしても、それを送るにしても、ドキドキが止まらなくて困る。久我さんはいつもレスが早い。だからこのときも、すぐに返事がくると思っていた。「……」五分、十分、一時間……ベッドでゴロゴロしながら、私が送ったメッセージに既読が付くか確認する。けど、いつまで経っても既読にはならなかった。いつもすぐにくる返信がこないと、それだけで不安が募る。仕事でスマホをチェックする時間などないのかもしれない。久我さんは忙しい人だから、恐らくその可能性が高いのだろう。股票手續費、それとは違う想像が頭の中を駆け巡る。私、彼に何かしてしまったのだろうか。

この間エレベーターの中でキスをしたとき、拒絶してしまったせいだろうか。それとも、もう私に興味がなくなったとか?ネガティブな性格ではないはずなのに、どんどん思考がネガティブへと陥っていく。「……ダメだ、重すぎる」まだ付き合ってもいないのに、こんなに重い自分に引いてしまう。

スマホばかり眺めていても、意味がない。私は気分転換のために、部屋掃除をすることにした。きっと部屋全体が綺麗に片付いた頃には、返信も来ているだろう。好きなバンドの曲をかけながら、とにかく無心で掃除に取り掛かった。リビングからトイレ、洗面所、バスルーム、寝室、キッチン。1LDKの間取りの部屋だとそこまで時間は掛からないはずなのに、こういう所で変に完璧主義を求めてしまうのがAB型の私。結局三時間も掛かり、部屋は誰が来ても胸を張って大丈夫だと言えるくらい綺麗になった。「あ、返信……さすがに来てるよね」なんて呟きながら、リビングに放置していたスマホをチェックする。メッセージは何件か届いていたけれど、そこには肝心の久我さんからのものはなかった。でも、私が送ったメッセージには既読マークが付いている。ということは、彼はこのメッセージを読んでいるということだ。「何なのよ……」既読スルーなんて、普段なら全く気にならない。でも、今回だけは例外だった。せっかく部屋は綺麗になっても、心が少しも晴れない。このままこうしていると、またネガティブモードに入ってしまう。私は更なる気分転換のため、お風呂に入り出掛ける支度を始めた。

行き先は、いつものすすきのの立ち飲み屋だ。地下鉄に乗り店に向かっている間も、なぜ返信がこないのかずっと考えていた。恋って、本当に厄介だ。思考の全てを奪われてしまう。好きな人のことばかり、考えてしまう。結局店に到着してからも、返信はないまま時間だけが過ぎていった。「今日は一人なんて、珍しいね。これから合流かい?」ここの店の店長は、口元の髭が特徴的な恐らく五十代と思われる男性だ。見た目はがっちりしていて、いかついが、決して怖い人ではない。かといって、あまり積極的に客に話しかけるタイプでもない。それでも無愛想というわけではなく、適度に話を振ってくれる。その、ほどよい距離感が私は好きでここに通っているのだ。「今日は、一人なの。ていうか、元々私、ここには一人で通ってたし」「そういえば、そうだったね。最近は久我くんと二人で来ることが多かったから、忘れてたよ」「……そう」私は、ここで一人でお酒を楽しむ時間が好きだった。誰にも邪魔されず、誰にも気を使うこともなく、私が私でいられる。たまに店長とお喋りして、一人で住む家に帰宅する。それが、私の日常だった。でも、久我さんと親しくなり、彼のことを知っていく内に私は変わっていった。一人でお酒を楽しむよりも、彼と二人でいるときの方が何倍も楽しいと気付いた。そしていつからか、二人でこの店に来ることが当たり前になっていたのだ。「呼んでみれば、来るかもしれないよ」「……今日はいいの。一人で飲みたい気分だから。ビールもう一杯ちょうだい」「はいよ」既に入店して二時間が過ぎている。時刻は午後七時を過ぎ、少しずつ客の入りも増えてきた。

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